Column

 

道楽写真家のすすめ

 

撮影をしていると、よく周りの人に「プロですか?」と聞かれる。「アマチュアです」と答えると、「そうですか〜」とがっかりしたようなテンションの下がった返事が返ってくる。プロならば、オッ スゴイと期待が高まり、何かもっと話したいような雰囲気に浸れるのかもしれない。

世間の人はカメラを持って撮影しているカメラマンを、プロなのかアマなのか、有名なのか無名なのか、識別と格付けをしないと気が済まないのでしょう。1億総カメラマンと言われるように、有名撮影地では自称「写真家」と呼ばせるカメラマンがひしめき合ったりして、色々な呼称が乱れ飛んでいます。私のホームページのブログのタイトルをWebデザイナーの方が”写真家のひとり言”と付けてアップしたところ、写真仲間から「プロの写真家と紛らわしいから、アマチュアらしく”日曜写真家のひとり言”とか”サンデー写真家のひとり言”とかにしなさい」と物言いがつきました。写真に関しては素人のWebデザイナーが、私を”写真家”と評してくれたのならそれでいいものだと思っておりましたが、「あんたはアマチュアで、趣味で日曜日に撮影しているのだから、”日曜写真家”とかサンデー写真家”とかを名乗りなさいよ」というようなニュアンスの意見をもらいました。

また、ある時は別の人から「何年写真をやっているのですか?」と尋ねられて、「中学生の時から始めて30年以上ですよ」と答えたら、「何かコンテスト等で賞を獲ったことがありますか」と聞かれて、とりわけコンテストでガツガツ賞金稼ぎなど意識してなかったのですが、世間一般の人はそういった評価で格付けをしたがるのかもしれません。

私の写真活動は、自分の好きなモチーフを自分の好きなレンズ機材と表現で撮影して作品を作りたかったのですが、やはりコンテストや月例などで揉まれて評価を受けることもひとつの通過儀礼と思い、コンテストや月例も一通りチャレンジしてきました。撮影を続けていくうちに、撮影機材も大型化して増殖してきました。

ある時、水戸市の芸○館でプライベートで二人のモデルさんを大型三脚に600mmの望遠で、20m位離れた所から黄色いメガホンで指示を出していたところ、スタッフが飛んできて「許可を取ったのですか?」と尋ねてきたので、「いいえ、女の子のポートレートを撮影しているんです」と答えたら、「事務所へ一緒に来て下さい」と言われ連れて行かれました。「プロですか?」と聞かれたので、「いいえ、アマチュアです」と答えたら、「大型の三脚を立てて、レフ板を持って、モデルとアシスタント連れて、メガホン使って撮影する人はアマチュアではない。アマチュアは首からカメラをぶら下げて、パチパチ記念写真を撮っているのがアマチュアだ」と言われてしまいました。許可証を書いてくれと言われたので書きましたが、撮影した写真を何に使うのかと聞かれたので「フツーに趣味で撮っているんです」と答えたら、「普通じゃない」と言われてしまい、県芸術祭応募作品製作の為とか何とか理由を書いて、ようやく撮影許可が下りた次第でした。やはり、公務員は外見だけで判断するのだ。

プロかアマなんていうのは、写真でメシを食っている人がプロ、仕事写真で稼いで税金をいっぱい納税する人がプロです。それ以外は、結婚式の写真を頼まれて謝礼をもらったり、コンテストで賞金をもらった人でも金額が少なければ皆アマチュアです。

では、写真家とは何か?

写真の大家?いいえ、私は「写真家=写真作家」と捉えています。

写真家は写真作品を製作発表する人。写真を撮るプロカメラマンでも、画題と作者名が残らない写真は、広告の素材として利用され消費されてしまいます。これは写真素材であって写真作品ではないからです。たとえアマチュアでも、きれいな花、美しい風景を「美しきもの、心やさしく」の祈りの心でシャッターを押し、試し焼きのプリントを主題を浮き上がらせるようにトリミングして無駄をそぎ落とし、丁寧に額装して洒落た画題を付ける、これが写真作品です。そして完成された写真作品を個展なので展示・発表する事が写真家活動になります。

皆さんも、お気に入りの写真を作品として見せてはいけない所をトリミングして完成度を高めてから、キャビネサイズや四切サイズに伸ばして額装して額の裏側に画題と作者名を書き記してください。

これであなたも写真作家です。

写真家と名乗るのはプロみたい、と周囲に言われるならば、道楽写真家と言い切っちゃって下さい。どうせ遊びならば真剣に遊びましょうよ!